阿呆

桃色のお前はよくやってくれた。おかげでわたしは無事に腹を下し、カリウム電解質もすべて吐き出し、全身を痙攣させながら脱水症状に陥ってぐったりとしている。もうだめかもしれないとわたしは思う。からだとかこころとかそういう部分的な話ではなくて、わたしの人生そのものが静かに終末に向かっていくような絶望感ゆえの。

まずは恋人にすべてを話した。まだオーバードーズが続いていること、日に日に飲む量は増えていること、吐き気、眠気、集中力低下など、あらゆる副作用に侵されて基本的な生活がまっとうできていないこと。医者に打ち明けたら、老化がひとより早く進むよと淡々と告げられたこと。10年20年後を想いながら生きるなんて阿呆らしいと思っていたけれど、本当に阿呆だったのは現在すら大切にできていないわたしだった。

もう一度やってみようと恋人が言った。わたしは安堵した。けれどそれを聞く前からその言葉に甘えていたのだろう。だから自ら転落していったのだ。まだ手を差し伸べてもらえると勝手に決めつけて。

妹にもそういった話をした。わたしの言い訳のオンパレードを聞いたあと、彼女は、馬鹿、と言い、続けて、衝動的に飲んでしまうその瞬間をもう少し闘ってほしいと言った。そのとおりだった。いっしょに、ということだよねと訊ねると、そう。と返ってきた。彼女は一般論的な話をしているわけではなく、わたしがしんどくなるとわかりきった行為は控えさせたいと、そのためにいっしょに闘いたいと言ってくれているのだった。わたしは共闘すら避けていたのかと情けなくなった。

これを書きながらまたお前を飲んでしまって、少しの安堵と、少しの後悔がふつふつと湧いてきているんだけど、きょうはこれきりにしよう。後悔も不安もなにもかもきょうはこれきりでさようなら。